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アイコン家庭用・電動式生ごみ処理機は本当にお得か?

はじめに

家庭ゴミ減量への期待から、家庭用・電動式生ゴミ処理機(生ゴミ処理機)購入費用の一部を助成する自治体が増えてきました。しかし、助成するとはいえ生ゴミ処理機はやはり高価な買い物に違いありません。また、生ゴミ処理機に関する自治体独自の調査が少なく、「果たして購入するメリットがあるのか判断つきかねる」という声も少なくないのです。 そこで、東京農業大学(東京農大)生ゴミリサイクル施設見学会における"生ゴミ処理機に関する質問と答え"を中心に、生ゴミ処理機に関する気になる情報をまとめてみました。(2004/11/20)

Q&A

匂い Q 生ゴミ処理機利用の経験者から「ひどく匂う」との不満があったが?

A

【乾燥型】
メーカーや機種により違いがあり、脱臭装置の性能が良ければ匂わない。
価格は高くなるが、脱臭機能が優れているものなら99%匂わない。
(東京農大で実験した脱臭機能付きの機種価格は7万円前後)

【バイオ処理(微生物型)】
室外用機種は微生物の分解に伴う匂いは出るが、これは"健全な発酵臭"。

肥料効果 Q 高温で脱水・乾燥する乾燥型の場合、微生物が死んでしまうのでは?

A

【乾燥型】
130℃前後で乾燥すると微生物は死ぬが、栄養分(窒素、りん酸、カリ)は残る。
100℃前後で乾燥する場合(モード運転など)も微生物は死ぬが、130℃乾燥より多くの栄養分が残る。

【微生物型】
微生物の力を借りて30〜40℃で分解させるので、殆どの栄養分が残る。

ランニングコスト Q 企業製品と同機種でのランニングコストのデータはありますか?

A

【乾燥型】(処理量・700g/日 平均消費電力555w、定格消費電力770W)

東京農大・Y社製品20台調査結果
1000円/月 12000円/年
Y社パンフレット
130℃(2時間以内乾燥)……630円/月 7000円/年
100℃(3時間乾燥)……900円/月 10800円/年
平均……765円/月 8900円/年

なお、生ゴミ処理機を使用した場合の電気料増加分を、一般家庭の平均電気料金から算出すると、企業パンフ平均は9・3%、東京農大報告では12.2%となる(※)。

この差について、Y社担当事業部に問合せ、「一般家庭から出る生ゴミは、企業で実験に使う生ゴミと違って種々雑多なので、実際の使用では企業データより高い電気料になるのでは」と投げかけたところ、「そうかも知れない」との返事であった。

【微生物型(屋外型)】(平均消費電力量16W、定格消費電力量320W)

Y社・パンフレット
250円/月 3000円/年

微生物型のラニングコスト250円は大変安上がりな印象を受けるが、これはパンフレットの隅には小さく表示してあるように「気温20℃の場合」。微生物型の場合、外気温が10℃〜0℃になると、機器内を発酵しやすい30~40℃に保つため2〜3倍の電気を使うことが予想され、「年間では3割近く多く使うことになるのでは?」と投げかけたところ、Y社の担当者は否定しなかった。

また、ゴミの組成や投入方法も実験と実際では異なることが予想されるため、ラニングコストは月300円以上、年間では4千円程度と考えるのが無難なようだ。

とはいえ、バイオチップの追加投入をせずに済む微生物型の場合、ラニングコストはコーヒー代程度で、日当たりのよい場所に機器を置けばエネルギーや家計負担を少なくすることも可能。生ゴミを堆肥化する場所はないがガーデニングを楽しむ場所が少しでもあれば、購入を検討する価値はある。効率の悪い真冬は休むなど、臨機応変にやれば多くの家庭で続けられそうだ。

外気温に左右される微生物型は、外気温が低いほど割高になるため寒冷地向きではなく、企業担当者によれば、寒冷地用には、機器内温度が外気温に左右されずに済む、乾燥型を薦めたいとのことだ。

減容率

乾燥型で1/7、微生物型では1/10に減量される(東京農大・企業とも同じ回答)。

※省エネルギーセンター・01年度調査 1503世帯・平均家族数3.18人(単身世帯11%を含む・ただし国勢調査上の単身世帯は26.5%) 百円未満四捨五入
年間 電力消費量 4487KWH 電気料金 98700円(月換算 374KWH 8200円(40A:8600円,30A:8000円))

まとめ

1 購入の検討
企業パンフだけでなく企業外情報も参考にしよう。
2 匂い対策(良い肥料をつくるには)
・投入する際、肉や魚の量を全体の1/3以下にする。たとえ99%脱臭する装置が付いている場合でも、肉や魚が多すぎれば窒素分過多となり根腐れの原因となる。
・腐敗したものを入れない。腐敗したものは匂うばかりでなく、良い肥料が出来るとも思えない。
3 省エネ対策
機器の省エネ対策は数年前より進んでいるものの、乾燥型の場合、高温で1.5〜3時間運転するため、多くの電力を必要とする。乾燥型を利用する場合は、無駄な電気機器を処分するなど、家庭全体での省エネ対策を進めたい。
4 価格
生ゴミ処理機の価格は5万円〜7万円。修理部品保存期間6年を目安にした場合の減価償却は年1万円前後(5割助成で5千円前後)である。年間ランニングコストは、微生物型で4千円、乾燥型では1万円前後が予想され、機器・ランニングコストを合わせると、年間1万〜2万円(5割助成で1万〜 1万5千円)の出費が予想される。
5 購入のメリット・減量効果など
猛暑の夏('04年)に生ゴミ処理機がたくさん売れたわけは、生ゴミの匂いから開放されたい家庭が多かったためらしい。生ゴミ回収日が少ない地域や集合住宅などでは、こうした利用法が購入のメリットとなるようだ。ただし、匂い対策が動機で購入した場合は、家計節約志向から、梅雨時・夏場などの限定利用となることが予想される。
一方、ゴミ減量に協力すべく処理機を購入(またはモニター)したものの、肥料として生かす場所がなく、結局はゴミとして捨てざるを得なかったとの報告もある。この場合は、家計節約志向だけでなく、"生かすことの出来ないむなしさ"があいまって継続することが難しく、多くの家庭で継続的に使用されるとは思えない。
結局のところ、生ゴミ処理機を継続的に利用できるのは、次のような家庭といえる。
  • 機器購入とラニング費用、合わせて年間1万円程度の投資が可能
  • 割高な肥料代となることを、環境問題への貢献として割り切れる
  • ガーデニングへの関心とそのためのスペースがある

生ゴミ処理機助成によるゴミ減量への課題

東京農大の報告によれば、農産物の生産現場では、'土壌分析機器'による土壌成分の分析が、有機栽培生産地での収量増加や土地汚染防止に大きな成果を挙げているとのことです。現在のところ、分析機器の価格やPR不足などから、土壌分析を実行している生産者はまだ少ないようですが、より広範な普及が望まれるところです。

同じように、家庭で作られた生ゴミ肥料の分析を安価で簡単に出来る機器が開発されれば、家庭生ゴミ肥料の健康度も客観的に知ることができます。そして健康な肥料であれば有価物として扱うことが可能になります。更に、生ゴミ肥料を有価物として扱う社会的な仕組みができれば、生ゴミ処理機の利用を、匂い対策や単なるゴミ減量だけに終わらせず、継続的な'生かすゴミ減量'につなげることも夢ではありません。

家庭で使い切れずに余ってしまった生ゴミ肥料が、行政や企業に買い取られ、公園整備や荒地の回復、ほかの家庭でのガーデニングなどに役立つことがわかれば、多くの家庭で、積極的に生ゴミの肥料化に積極的に取り組むことができます。このようなシステムをどの地域にも誕生させて、'捨てずに生かす'ことを社会全体の最終目的としたいものです。

関係者の検討・奮闘を、ぜひとも期待したいところです。


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